2021年07月27日

小説のストーリーとは全く関係ありませんが・・・

・・・海のお話ということで、失礼します。

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 今日、TOKYO2020 サーフィン会場(千葉県長生郡一宮町)近くを車で通りました。渋滞しているかも知れない、最悪の場合は迂回することも覚悟しておりましたが、スムーズに通過でき、安堵するとともに、少々拍子抜けしております。とはいえ、雰囲気を味わえたのはとてもうれしかったです。
 今日は、女子の3位決定戦で都筑有夢路選手が銅メダルでした!おめでとうございます!!
 男子の方は、五十嵐カノア選手が銀メダル以上を確定し、今日の優勝決定戦に金メダルをかけます(残念ながら、金はとれませんでしたが、それぞれ素晴らしい活躍で銀メダルでした!おめでとうございます!!)
 台風については、地元では「かえっていい波になった」ということで、問題にならないどころか、むしろ喜ばれているようです。

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  五十嵐カノア選手

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  都筑有夢路選手

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  もう一つ、都筑有夢路選手

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2021年07月20日

『海底の舞踏会』改作 第2部:2 鑑賞 (全9回め)


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 奈々子はいつまでも動けずにいた。前章冒頭の『いつまでも』は、心の中の時間・感覚的なものに過ぎなかったが、二度めは違っていた。まるで腰が抜けたように座り込み、いつしか外は明るくなっていた。

 その脱力状態から、彼女を解放したものがあった。

 ジリリン、ジリリン

 電話のベルの音だった。奈々子は、我に返ると受話器を取った。 

 「もしもし、黒井でございます」

  電話の相手は、ミサが行っているバレエ・スクールだった。

「おはようございます。ミサ様はそちらにお帰りでしょうか?また、何かお嬢様から連絡などはなかったでしょうか?」

  高校出たてくらいだろうか、ミサとそう何歳も変わらない若い女性の声だ。

「いいえ、何も。そちらで何かあったのでしょうか?」

「実は・・・大変申し訳ありませんが、今朝お嬢様のお姿が見えなくなりましたものですから・・・」

  電話の相手は、ひたすら恐縮している。そんな相手を奈々子はいたわった。

「若い人のようだけど、大変ね。辛いことに負けずに頑張ってくださいね」

 一通り話をすると、奈々子は受話器を置いた。落ち込む彼女に黒猫がすり寄り、慰め、励まそうとしていた。

「ありがとう、ガット」

  ガットというのは、この黒猫の名前だ。イタリア語で『猫』という意味で、その点では少々安易だが、10年ほど前に流行った歌から『タンゴ』などとつけるよりはまだお洒落と言えるだろう。
  奈々子は、黒猫に食事を与えた。ガットも空腹だったろうに、よく我慢して寄り添ってくれた。いつもよりも美味しそうなものをたくさんあげたので、とても喜んでいた。
  
  美味しそうに餌を食べる黒猫をしばらく眺めると、奈々子は、再度水晶球を覗いた。溺死であるとは思われるが、どのような形でミサは死んだのか?どうして、水着を着けず、全裸だったのか?他の裸の女性たちは?そうなるまでの経緯は?そして何より、何故黒魔術をもってしても蘇生が叶わなかったのか?
  
「エコエコアザラク、エコエコザメラク」
  

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  最初の場面は、白鳥学園の洋館を入ったところだった。ミサと長身の青年が何やら話をしている。彼は、なかなかハンサムだが、目の前にいる制服姿の少女にはあまり関心が無さそうだ。

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  次は、バレエのレッスンの場面。先に見た青年が講師のようだった。しかし、先ほどとは異なり、レオタード姿になると俄然ミサに興味を持ち始め、魅力を感じているようだ。彼は彼女とだけ長時間踊っていた。

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  三番めは、ミサが白い水着に着替えるところだったが、奈々子はそれを見ただけでいたたまれない気持ちになった。その死の一因として、自分がミサの黒魔術に制限をかけていたからだ。だから彼女は、我が子の死に普通の母親の立場以上の責任を感じていたのだ。
  そして、ミサが水着姿になったこと、それは間もなく我が子が水の中に入り、溺死することを意味するからだ。だが『間もなく』ではなかった。実際、この後ミサは海に飛び込み、ボートを追って泳いだ・・・この後、4時間以上も泳いでいたのだ・・・あまりに長そうだったので、奈々子は途中を省略した。
  
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  奈々子が水晶球を見るのを再開したところは、ウエットスーツとアクアラングをつけた青年がボートから降り、海に潜るところからだった。ミサは素潜りで後を追った。この時点で、青年が我が子の死に大きく関わっていることは明らかだった。

  (もう、やめて!)

 母はそんな気持ちだった。
 途中、ミサが彼の姿を見失うと、

 (そうよ、ミサちゃん。もう帰りましょう!)

と思ったが、少女はすぐに海底洞窟の入口を見つけ、中に入ってしまった。

(ああ・・・)

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 一度見ていたとはいえ、海底洞窟内の情景は衝撃的だった。水流に従って踊る十数人の裸の女性たち。彼女たちはすべて死体のようだ。アクアラングとウエットスーツ姿の男もいる。
 そこに、ミサが入って来た。

(だ、だめよ、ミサちゃん!逃げて!帰って!!)

 ここにきて、奈々子は、我が子が死んだ状況、その直後に起ったことすべてを理解した。ミサは、ここで捕らえられ、そのまま溺れて死に、水着を脱がされ、他の女性たちと同じように男のコレクションとなったに違いない!

 普通の母親なら、これ以上見ることができなかったに違いない。だが、奈々子は見続けた・・・我が子の最期を、そして、その後のことを。
 ミサは、岩の後ろに隠れながら、1分近く男と死体の女たちが踊るのを見ていた。その間にも、彼女の気持ちを表すようにその表情は激しく変化していた。

(この時、ミサちゃんは何を思っていたのかしら?)

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 だがそれは、ミサにとって人生最後の自由の身の時間だった。
 ついにミサは男に発見され、捕まった。彼女に照明が当たり、白い水着が強く光を返したからだ。もし、白い水着を着ていなかったら、見つかることなく洞窟を出られただろうか?
 捕らえられた次の瞬間、ミサは黒いゴーグルを剥ぎ取られた。奈々子は、捕まった時以上の恐怖と衝撃を覚えた。黒魔術を使うのに必要な唯一の黒いもの・・・ゴーグルが最後の命綱だったからだ。もう、これで黒魔術を使うことは、身を守ることはできなくなった。

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 その後、ミサは後ろ手に縛られ、俵担ぎされ、太腿を束ねられて、尻を叩かれていた。どうやら、死体たちに対する手拍子代りのようだ。

(嫁入り前の子になんてことを!)

 嫁入り前も何も、まだ中学生なのだ。

 そして、ミサは体と心を弄ばれながら彼の手の中で5分以上も生きていた。特に、ウェットスーツ越しに股を重ねられた場面では、奈々子も屍姦を想像した。

(やめて!傷物にするつもり!?)


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 数分後ミサは、可愛い顔を歪め、凄まじい形相を見せた。更に美しい身体を歪に捻り悶えた。それは、この一部始終の中で最も辛い場面であり、15年この子を育てた自分でも一度も見たことのない恐ろしい姿だった。その時の我が子の気持ちはどんなものだったのだろうか?

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 その直後、ミサは死にものぐるいの抵抗を見せ、一度は男を倒したが、体格・体力だけでなく、装備にも差がありすぎた。

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 やがてミサは、息が続かなくなり、力尽き、溺れた・・・
 その時に、あの凄まじい形相が消え、苦しそうながらも優しい顔に戻っていたのがせめてもの救いと言えたかも知れない。

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 意識を失くしたミサは、水中で体操選手としての最後の演技を見せた後は、家に帰りたい気持ちを表すかのように、何歩か歩いてうつ伏せに転んだ。倒れる瞬間、彼女の唇は母を呼ぶようにわずかに動いた。



 































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 更にその数分後、大好きな白い水着を脱がされ、素裸にされてしまった。その時には、意識どころか蘇生の可能性さえとっくに失くしていたはずなのに、カッと目を見開き、「いやーっ!」と叫ぶように口を大きく開けた。嫌悪感や不満を訴えるように。だが、それだけだった。もう何もできなかった。

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 水晶球を見終えた奈々子はうなだれ、心の中で我が子にわびた。それは、この時の彼女にできた唯一のことだった。

(ミサちゃん、ごめんなさい。すべて私のせい、私の責任です。私が、黒魔術に制限をつけたため、あなたは自分の身を守ることができなかった)

 奈々子は、水晶球を置いたテーブルに倒れ伏し、泣いた。

(私の可愛いミサちゃん、苦しかったでしょう。悔しかったでしょう。恐かったでしょう。恥ずかしかったでしょう。水着を脱がされて本当に恥ずかしかったでしょう。すべて私が悪いのです。私の責任です) 

 結局、なぜ黒魔術で蘇生できなかったことについてはわからないままだった。おそらく、ミサが死んでから、自分のところに霊が現れるまで時間がかかり過ぎたのだろう。
 とは思ったものの、自分の力では霊的なものを見ることができなかったので、それも憶測に過ぎなかった。

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 奈々子は、我が子の死を悲しみ嘆き、泣いていたが、そこはさすがに魔女だった。先に『普通の母親なら、これ以上見ることができなかったに違いない』と申し上げたが、彼女は同じ悲劇を何度も観直し、その後の水中の踊りも長時間ていた。

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 ここで『観』という文字を使わせていただいたのは、漢字を間違えたわけではない。我が子が、死体の舞を見、捕らえられ殺され、水着を脱がされるまでの約10分間と、死後の水中の踊りを、彼女は本当に『鑑賞』していたのだ。
 ミサも己の死の直前に死体の踊りを観て、愛でていたが、そんな退廃的なところがそっくり同じであるのは、さすが母娘としか言いようがない。

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 奈々子は、おそらくは世界一エロティックでセクシーな猟奇殺人事件を、録画したドラマのように何度も観続けた。更にその後は、被害者である我が子の全裸死体の踊りを何時間も眺めていた。途中からはお茶を飲み、お菓子も食べながら、いや朝昼二回の食事さえ本格的にとりながらの『海底バレエ』の『観劇』となった。

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 水流の悪戯から、ミサが陰毛の無い股を広げようものなら、

「ミサちゃん、可愛い!」

と、歓声を上げ、手を叩きながら身を乗り出す、という始末だった。

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 常識人の皆様は、我が子を亡くしたショックで奈々子が発狂したかと思われることだろう。だが、これは奈々子がミサを供養し、霊魂を守り、慰める彼女なりの方法だった。
 今ミサの霊が、母親である自分を見ているかも知れない。我が子は、自分の美しい姿を愛で、褒めてもらいたいはずだ。そして、母親である自分が少しでも元気であることを望んでいるに違いない。そんな意味が込められているのであった。

 この殺人事件は、いくつもの点で、特殊なものだった。特に被害者の心情は、世間一般の常識では理解し難いものがあったのだ。
 その心情について、二つ挙げておこう。一つは、ミサが警察に通報したがらなかったのと同じ理由だ。自分はもちろん、他の死体にも傷をつけたくない、特に司法解剖のメスを入れられるのは嫌だった。
 それでいて、死後は自分の美しい姿を誰かに・・・ヌードなので誰でも良いわけではなく、信頼できる誰かに・・・見てもらいたい、できれば『観て』褒めてもらいたいと思っていた。だからこそ奈々子は、我が子のヌードを長時間愛でていたのだった。
 この事件を警察と司法の手に委ねてしまうなら、美しい身体が切り裂かれるなら、我が子は浮かばれないだろう。そうならないためには、この『鑑賞』は、避けて通れない『儀式』なのであった。

 そしてもう一つは、被害者であるミサが犯人の谷中に恋していること、それも生前だけでなく、殺された後もであったことだ。
 奈々子とて、我が子を殺した男は憎かったが、水中造形家及び水中舞踏家としての彼については、自分自身もファンに成ろうとしているのを感じずにはいられなかった。


 死体の舞にすっかり夢中になり、そして泣き疲れた。あれから何時間経ったのだろう、気がつくと、辺りは薄暗くなろうとしていた。

(あら大変、もうこんな時間に・・・)

  とはいえ、一体何をしたら良いのだろうか?臣夫の出張先のホテルに電話するにはまだ早い時間だ。

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  そんなわけで、奈々子は写真屋に出かけた。ミサの水着姿の写真・生前最後の写真ができている頃だ。1970年代後半のこの頃、写真(もちろんフィルム・カメラ)の現像には1週間近くかかっていたが、この店は何と2日で仕上げてくれたのだった。

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「一昨日の写真ですね。できておりますよ」

  横田カメラ店の店主は、人の良さそうな中年男性である。彼は、優しく奈々子を迎えてくれた。

「ミサさんはお元気ですか?」

「は、はい、おかげ様で・・・」

  その時まではにこやかな表情だったのだが、奈々子のぎこちない返事を聞くと、表情を曇らせながら言った。

「写真ですが、ご覧にならない方が良いかも知れません」

「どのような意味でしょうか?」

 店主が好意から言ってくれたのは明らかだったが、それで諦めるわけにはいかなかった。我が子の生前最後の写真だからだ。奈々子はあえて頼んだ。

「変な写真でもお願いします。大切なものですから」

「そうですか・・・どうかお気になさらないでくださいね」

 そう言うと、店主は心配そうに写真を差し出した。


(続く)


【次回予告】

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心霊写真

 店主から渡された写真には、そこにはいなかったはずの少女が写っていたのだった。その正体とは?

http://ilgattonero.livedoor.blog/archives/10802583.html?ref=head_btn_next&id=8392744


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2021年07月07日

『海底の舞踏会』改作 第2部:1 蘇生 (全8回め)


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1977(昭和52)年8月23日早朝 東京

 奈々子は、ミサの霊が消えた場所からいつまでも動けずにいた・・・その「いつまでも」の時間であるが、本人の心の中の時間であり、彼女自身は何時間にも感じていたが、実際には10秒にも満たなかっただろう。
 そう、奈々子には急いでしなければならないことがあった。ミサの蘇生だ。死亡時の状況はどうだったのだろうか?我が子の様子・・・水着姿で、全身が濡れていた・・・からすると、海かどこかで溺れたのだろう。
 しかも、後ろ手に縛られていることが、まともな死に方ではないことを物語っていた。普通に泳いでいて溺れたとはとても思えない。
 

 彼女は、水晶球で我が子の姿をさがした。

 「エコエコアザラク、エコエコザメラク」

 その画像は、すぐに見えた。見えたと同時に彼女は驚きの声をあげた。

 「ううっ!」

 もちろん、そこにはミサをはじめとする全裸の女性たちの姿が!真っ暗な場所、それも水中、海底の洞窟であると母は察した。全員が死んでいるようだ。
 ミサの顔は、苦しさと悔しさ、悲しみ、そしてそれ以上の恥ずかしさで一杯のようだった。それにしても、どうして買ったばかりのお気に入りの白い水着を着ていないのだろうか?
 帰ってしまった後なのか、殺人犯らしき者の姿はすでになかった。我が子の身に何が起ったのか見当もつかなかったが、奈々子は遠隔の黒魔術でミサの蘇生に取りかかった。
 
 まずは、溺者の顔を空気中に出すことだ。

 「エコエコアザラク、エコエコザメラク」

 幸い、洞窟の天井には空気がたまっていた。ミサの顔はすぐに水面に浮かび出た。

 (よし!)

 次いで、心臓マッサージと人工呼吸だ。黒魔術を使えば、どちらもよりダイレクトに臓器に働かせることができそうだ。
「エコエコアザラク、エコエコザメラク」
 もう一度呪文を唱えた。今、ミサの胸、正確には、心臓と肺が動くのが水晶球から見える。

 (これで大丈夫)

 奈々子の心に安堵感が広がった。

 (そろそろ生きかえるわ)

 だが・・・

(?)

・・・だが、ミサには生きかえる様子、生への兆しはいっこうに見られなかった。

 奈々子は再度呪文を唱えた。

「エコエコアザラク、エコエコザメラク」

 しかし、何も起こらなかった。奈々子の表情に次第に焦りの色が見え始めた。心肺停止から3分以内に蘇生しなければならない。その時間を過ぎれば、生きかえることは難しい。
・・・だが、今度も何も起らなかった。

「ふーっ」

 奈々子は、ここで深呼吸を一つ入れた。焦りの色は濃くなるばかり。

「エコエコアザラク!エコエコザメラク!!」

 今度の呪文には、かなり力がこもっていた。
 それでも、ミサの心臓が鼓動を取り戻し、自発的な呼吸をすることはなかった。

 奈々子の顔から焦りの色が抜け、代りに絶望と諦めの表情が浮かんだ。

(あの子はどうして死んだのだろう?溺れた?こんな夜中にどうして?あの子が溺れて、心臓が止まってから、どれだけの時間が経っているのだろう?どうして水着を脱いで裸になっているのかしら?そして、ミサと一緒にいる裸の女の人たちは誰なんだろう?皆んな死んでいるようだけど?)

 奈々子は、裸の少女を改めて見た。ミサは他の女性たちと比べれば小柄で、ウエストのくびれも浅く、子どもっぽさは否めなかったが、輝くような健康美を見せていた。胸や尻は豊かなだけでなく、空気中でも垂れることはないだろう。
 母は、我が子の発育の良さに驚き、感心もした。それだけに、何者かに人生半ばで生命が奪われ、断ち切られたことが悔しくてならなかった。
 そんなことを思い、奈々子は再び動けずにいるのだった。

 そしてもう一つの疑問が、

(どうしてミサちゃんだけ・・・


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・・・あそこに毛がないのかしら?

(続く)

【次回予告】

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鑑賞

 蘇生を諦めた奈々子は、水晶球でミサの溺死の一部始終と、裸身の踊りを鑑賞(!)し始めた。何と、お茶を飲み、食事もしながら!

http://ilgattonero.livedoor.blog/archives/10635754.html?ref=head_btn_next&id=8392744


ilgattonero at 23:44|PermalinkComments(2)小説